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ADHDを知る——「わざとじゃない」を出発点に
発達障害を知る
/ りたのわ
水筒を学校に忘れる。取りに戻ったら今度は上着を忘れる。「今日こそ忘れないでね」と念を押した日に限って、連絡帳ごと忘れてくる——笑い話のようで、毎日続くと笑えません。親のほうが先に息切れします。
「やる気の問題」ではない、が出発点
ADHD(注意欠如・多動症)は、注意の向け先や衝動のコントロールに関わる、脳の特性です。しつけの失敗でも、愛情不足でも、本人の怠けでもありません。ここを心から納得できるかどうかで、その後の親子関係が大きく変わります。
本人の頭の中を想像してみてください。テレビが5台、全部違う番組を流している部屋で宿題をしているようなものです。どの音に集中するかを選ぶ機能が、まだうまく働かない。「集中しなさい」と言われても、リモコンの場所が分からないのです。
がんばらせるより、環境を変える
だから対策は、根性ではなく環境です。訪問先のご家庭で実際にうまくいった工夫を、いくつか紹介します。
玄関のドアに「出発前チェック」を貼った家。項目は3つだけに絞ったそうです(10個書いたら誰も見なくなった、とのこと。分かります)。
指示を「一度にひとつ」にした家。「手を洗って、着替えて、宿題ね」は、最初のひとつしか届きません。手を洗い終わってから次を言う。まどろっこしいようで、結局これが最短距離でした。
できた瞬間に言葉にする家。「今日は自分でランドセル準備できたね」を、その場で。夜にまとめて褒めても、本人の中ではもう別の番組が流れています。
いちばん防ぎたいのは「二次障害」
ADHDのある子は、何もしなければ、叱られる回数が同年代の何倍にもなります。毎日毎日「またやったの」を浴び続けると、「どうせ自分はダメなんだ」が心に根を張ってしまう。特性そのものより、この自己否定——二次障害と呼ばれます——のほうが、その後の人生に影を落とします。
裏を返せば、環境を整えて叱る回数を減らすことは、単なる生活の工夫ではなく、その子の自己肯定感を守る医療的な意味のある関わりだということです。
家の数だけ、正解の形は違います。りたのわは実際の暮らしを見ながら、その家に合う回し方を一緒に探す訪問看護です。「もう工夫のネタが尽きた」というときこそ、声をかけてください。